SIer経験は事業会社でどう「翻訳」されるか

SIer出身者が事業会社のIT部門やDX推進部門へ転じるケースは増えています。しかしサーチの現場で見る限り、SIer経験に対する事業会社側の評価は二極化しています。経営に近いポジションに迎えられる人材がいる一方、面接段階で「カルチャーが合わない」と判断される人材もいます。この差は経験年数やプロジェクト規模では説明できません。評価の分岐はSIer時代の「経験の質」に起因しています。

評価される条件——事業課題を起点に動いた経験

事業会社がSIer出身者を高く評価するのは、システム構築そのものではなく顧客企業の事業課題を理解しその解決策としてITをデザインした経験を持つ場合です。要件通りのシステムを作るのではなく、業務プロセスを分析した上でシステム化の優先順位を提案し、導入後の業務変革まで伴走した——こうした経験は「自社のDX推進を任せられる」という信頼に繋がります。

QCDの管理能力は前提として評価されますが、それだけでは「優秀なベンダーマネージャー」の認識にとどまる傾向があります。事業会社が求めているのは自社の事業を技術で変革できる人材です。

評価されない条件——受託構造が形成する行動様式

面接で評価が伸びないパターンにも構造があります。最も顕著なのは「要件を受け取って忠実に遂行する」という行動様式が染みついたケースです。SIerのビジネスモデルは顧客定義の要件に最適なソリューションを提供する構造であり、長くキャリアを積むと「要件がなければ動けない」という思考が無意識に定着することがあります。

事業会社の内部では課題自体が未定義の状態から始めることが日常です。「何をすれば良いかわからないが変革は必要」という曖昧さの中で自ら課題を設定し、関係部門を巻き込む力が問われます。この自律的な課題設定力はSIerの受託構造では鍛えられにくいと考えられます。

「経験の翻訳」が転職後の成果も左右する

SIer出身者が転職を検討する際に有効なのは、自分のキャリアを事業会社の視点で再解釈することです。過去のプロジェクトを「どんなシステムを作ったか」ではなく「どんな事業課題に対し、なぜその解決策を選んだか」で語れるかどうか。この翻訳の精度は面接の成否だけでなく、入社後のパフォーマンスそのものを左右する変数でもあります。