肩書きと権限が一致しない構造的理由
CDOやCTOの肩書きは、外から見れば経営のテクノロジー領域を統括する最高責任者です。しかし、サーチの現場で着任後の実態を聞くと「思っていた権限がなかった」という声は珍しくありません。これは特定の企業の問題ではなく、日本企業のCxOポジション設計に共通する構造的課題といえます。
背景にあるのは、既存の権限構造とのコンフリクトです。CDOが設置される企業の多くは、すでにIT部門が情報システム担当役員の管轄下にあり、事業部門にはそれぞれの意思決定ラインが存在します。CDOに「全社横断のデジタル戦略推進」というミッションが与えられても、予算配分権が事業部門に残り、IT投資の執行権限が情報システム部門にあれば、CDOには実質的にリソースを動かす手段がありません。
入社前に権限構造を見極める視点
このギャップを入社後に発見するのはキャリア上の大きなリスクとなります。確認の視点は主に3つあります。第一に、「DX予算」の計上先と執行権限がCDO/CTOにあるのか。第二に、組織図上のレポートラインと実際の意思決定フローが一致しているか。第三に、前任者がいる場合その退任理由は何か。短期間での退任が続くポジションには、構造的な障壁がある蓋然性が高いといえます。
肩書きの市場価値は権限の実態に紐づく
CDO/CTOの肩書きは次のキャリアにおいて一定のシグナル効果を持ちます。しかし、選考で問われるのは「何を管轄していたか」ではなく「何を動かしたか」です。権限のないポジションで2年を過ごせば、肩書きだけが残り語れる実績が伴いません。
ポジションを受諾する前に、肩書きの魅力に引かれるのではなく、その肩書きに実装されている権限を構造的に検証することが重要です。そこに費やす時間は、就任後の成果だけでなく、その先のキャリアの選択肢の幅そのものを規定します。