選考ではないが、評価は始まっている
カジュアル面談は選考ではない——建前としてはその通りです。合否の通知は出ず、履歴書の提出も求められないことが多いです。しかしサーチの現場から言えば、この場で形成される印象がその後の選考全体のトーンを決定づけるケースは極めて多いといえます。
面談後に「ぜひ正式選考へ」という意向が出る場合と、「良い方でしたが見送りで」という判断が出る場合があります。選考ではないはずなのに見送りが発生する——この矛盾が、カジュアル面談の本質を端的に表しています。
なぜ「カジュアル」という形式なのか
企業がこの形式を選ぶ背景には構造的な理由があります。正式選考の前に候補者のカルチャーフィットを確認したいという動機が第一です。エグゼクティブ採用では、正式面接に経営陣の時間を割く前に方向性の一致を見ておきたいという判断が働きます。
第二に、候補者が現職で転職を公にできない場合、「情報交換」という名目で心理的ハードルを下げる機能があります。しかし形式がカジュアルでも、人間の印象形成メカニズムまでカジュアルになるわけではありません。冒頭数分で形成された印象が会話全体の解釈フレームを規定します。
「聞く」と「話す」のバランス
よく見られる失敗は、候補者が完全に「聞く側」に回ることです。「まずは御社のお話を」という姿勢は謙虚に映りますが、対話が一方通行になると企業側は候補者の思考の質を掴めず、印象が薄いまま終わってしまいます。
効果的なのは、企業の説明に対して質の高い質問を返し、自然に思考レベルと関心領域を示すことです。事業課題の説明を受けた際に「その領域での意思決定のスピード感は」と問えば、それ自体が経営的視座を間接的に伝えます。質問は、何を知っているかではなく、どう世界を見ているかを映す鏡といえます。
カジュアルであるがゆえに本音が出やすい構造は、候補者側も活用できます。対話相手の発言の端々に、その組織の意思決定の質やカルチャーが透けて見えます。面談の力学を理解することが、キャリア判断の解像度を少しずつ高めていきます。