面接の手応えと結果が食い違うことがあります。面接官の評価は高い。議論も噛み合った。それでも内定には至らない。

このとき候補者の多くは、要因を自分の中に探します。回答の深度が足りなかったのか、経験の幅が不足していたのか。しかしサーチの現場で決裁の過程に立ち会っていると、判断は必ずしも候補者の内側で完結していないように見えます。

面接の評価と、内定の判断は別のもの

選考には複数の評価者が関与します。現場の責任者、人事、そして最終的に意思決定を行う経営層。この三者が同じ基準で同じものを見ているとは限りません。

面接官は、目の前の候補者を評価します。回答の構造、思考の筋道、実績の再現性。これは比較的、候補者個人に閉じた評価です。

一方、採否を最終的に決める段階では論点が移ることがあります。優秀性が争点にならず、まったく別の言葉が交わされる。この落差が、手応えと結果のずれを生んでいると考えられます。

優秀性の判断は、面接の前にある程度終わっている

理由のひとつは順序にあります。

履歴書と職務経歴書に書かれているのは事実です。どの企業で、何年、どの職責を担い、どの数字を動かしたか。優秀性を判断する材料は、面接を待つまでもなくそこに揃っています。

そして書類は、事実の一覧であると同時にひとつの文書でもあります。どの事実を選び、どう配列したか。読み手の関心を想定した構成になっているか。この時点で既に、書き手と読み手のあいだでコミュニケーションが成立しています。「会うに値するか」の判断は、ここでおおむね決着していると考えられます。書類そのものの設計については別稿で扱いました。

面接に呼ばれた時点で、優秀性についての判断はある程度ついている。だから最終段階で改めて論じられない。そう考えると順序が通ります。

言い換えれば、書類はより過去を検証し、面接はより未来を推し量る装置です。何を成してきたかは書類が担保する。面接が問うているのは、その先にあるものです。

やや古い調査ですが、示唆的な数字があります。中途採用の選考で重視する項目を尋ねたところ、「コミュニケーション能力がありそうか」が76.1%、「協調性がありそうか」が55.2%、「誠実性がありそうか」が51.7%と、人物面に関する項目が上位を占めました。

この結果は「結局は人柄」という一般論として消費されがちです。しかし順序の問題として読むと、含意が変わります。能力が軽視されているのではなく、能力の確認を終えたうえで、次の問いに移行しているという読み方が成り立ちます。

この数年で、「次の問い」の中身が動いている

ただしこの調査は2022年のものです。人物面が見られているという構図は不変だとしても、その人物面に何を期待するかは、この数年で動いています。

背景にあるのは要員計画の変化です。

主要企業111社を対象とした調査では、2027年卒の新卒採用を「減らす」と答えた企業が23%と、前回調査から11ポイント増加しました。「増やす」の16%を5年ぶりに上回っています。減少理由の最多は「デジタル対応を通じた省人化」でした。

一方、1,579社(うち非上場1,472社)を対象とした別の調査では、AIの浸透により新卒採用数が「変わらない」とする企業が90.3%、「減る」は4.0%にとどまります。

一見すると矛盾しますが、母集団が異なります。前者は主要企業のみ、後者は非上場企業が大半です。規模の大きい企業から先に絞り始めていると読むのが自然でしょう。

必要な要員が減るとき、ミドルマネジメントに期待される機能も変質します。人員が多く、部門が分化し、利害が衝突する組織では、摩擦を解消する能力に高い価値がありました。調整し、間に立ち、意思決定を前に進める。いわゆる潤滑油としての中間管理職です。

しかし要員が減れば、解消すべき摩擦の総量そのものが減ります。相対的に、別の要素の比重が上がる。サーチの現場で経営層から挙がる要件を整理すると、おおむね三点に収束します。

  • 対外的なコミュニケーション力:社内の調整・摩擦の解消ではなく、トップライン向上や良い組織文化の体現者になれるか
  • 新技術や変化への開放性:既存の方法論やルールに固執せず、AIなどの活用によってより多くの成果を追求できるか
  • 実装しきる力:面白い技術の話で終わらせず、プロセス・文化レベルでの実装を行い事業インパクトまで生み出せるか

言葉を選ばずに言えば、「潤滑油型の管理職はもう要らない」という趣旨の発言が経営層から出る場面が増えています。ここには誇張が含まれていると考えられますが、期待の重心が移動していること自体は確かなように見えます。

もう一点。要員が減るほど、一人あたりが組織の成否に与える影響は大きくなります。すると経営者にとって、優秀な人材を惹きつけられる組織文化を構築できるかどうかが、より重い経営課題になります。管理職に求められるものは、調整役であることよりも、その文化を体現していることへ近づいていきます。AI/DX領域における人材需要の構造についてはこちらでも扱いました。

最終決裁の直前に問われるのは「明るいか」「逃げないか」

この文脈を踏まえたうえで、実際の場面に戻ります。

内定を出す直前、最終的な決裁にかかる手前の議論に立ち会うと、交わされる言葉が素朴なことがあります。この人は明るいか。この人は逃げないか。

洗練された評価軸ではありません。しかしこの二つには共通点があります。いずれも、候補者個人の絶対評価ではないということです。

「明るいか」は、その人物が単独で明朗な性格かどうかを問うているとは限りません。この人が加わることで、優秀な人材が集まってくる場になるか。先に挙げた「文化の体現者」という期待を、経営者が日常の語彙に置き換えるとこの表現になる、と考えると整合します。停滞している部門なのか、消耗している部門なのか。組織の状態によって、同じ候補者への評価は動きます。

「逃げないか」も、在籍を継続するかどうかだけの問いではないように見えます。難所で、実装しきるところまで踏みとどまるか。構想や企画で終わらせず、数字が動く水準まで持っていけるか。三点目の要件と重なります。

つまり経営者は、候補者を見ているようでいて、自社の組織の現状と、これから必要になるものを見ていると考えられます。

「逃げないか」という問いには、より即物的な背景もあります。直近3年間で「入社半年以内の早期離職」が発生した企業は全体の57%。従業員300〜999名では80%、1000名以上では73%にのぼり、49名以下の46%を大きく上回ります。そして離職理由の最多は「仕事内容のミスマッチ」で57%であり、能力不足が中心ではありません。

規模の大きい組織ほど、優秀な人材を採用したのに早期に去られる経験を蓄積しています。その記憶がある場所では、次の採用で同じ問いが立ちます。人格への疑義というより、経験に基づく防御反応として理解できます。

この見方の限界と、それでもできること

ここまでの議論にはいくつかの留保が必要です。

第一に、引用した調査の射程です。人物面に関する調査は2022年のもので、従業員5〜300名の企業が対象です。新卒採用の調査は新卒の話であり、管理職の中途採用にそのまま適用できるとは限りません。早期離職の調査も有効回答291社で、業種の偏りまでは判別できません。それぞれ別の対象を測った数字を、並置して解釈しています。

第二に、サーチの現場で見聞きすることは統計的な標本ではありません。一人のコンサルタントの視界に入った範囲の話です。

第三に、対立する解釈があります。「明るいか」「逃げないか」は、単に言語化しやすいだけかもしれません。実際の判断はより多くの要素の総合であり、口に出た言葉が判断の全体を代表しているとは限らない。この可能性は残ります。

そして最も注意を要するのは、この見方が「不採用の理由は自分の外にある」という結論に着地しやすいことです。それは半分は救いですが、半分は思考の停止でもあります。

実務的な含意は、別のところにあると考えられます。書類と面接で、提示するものを変えるという一点です。

過去は書類が引き受けます。何を成し、どの数字を動かしたか。ここは事実の精度と構成の問題に還元されます。

面接で問われているのが未来だとすれば、提示すべきは実績そのものではなく、この組織に加わったとき自分がどう動くか、その解像度ということになります。相手の組織がいま何に詰まっているのかを、どこまで具体的に想定できているか。調整の実績を語るより、外部を動かした事例や、技術を損益に変えた事例のほうが、現在は届きやすいと考えられます。

「逃げないか」については、過去の退職理由をどう語るかに表れる傾向があります。困難があったこと自体は問題になりにくい。責任の所在をすべて外部に置いて語るか、自らの判断として引き受けて語るか。その差が見られているように思われます。

ただし、これは演じることとは異なります。明朗に振る舞う訓練をしても、おそらく効果は薄い。経営者が見ているのが自社の組織の状態である以上、噛み合うかどうかは候補者側の努力だけで決まるものではありません。

合わなかったという結果は、優劣の判定ではないと考えられます。そう捉えられるだけでも、次の選考での立ち居振る舞いは変わってくるように思います。

参考にした公表資料